笑気ガスを用いる治療
現在、日本国内の歯科医院ではほぼすべての歯科医院が虫歯治療時に麻酔を使用して治療を行っています。虫歯が初期段階でごくごく少量だけ歯を削れば良いときには虫歯を使わないこともありますが、歯を削って虫歯をとりのぞかなければいけないときには麻酔注射を行い、虫歯治療を進めていきます。麻酔をすれば通常は痛みを感じなくなりますが、麻酔が効きにくい方もいるほか、体質によっては麻酔そのものがほとんど効かない、または「虫歯治療自体が怖い」という精神的なプレッシャーを感じてしまう人もまれにいます。このようなケースでは酸素の中に亜酸化窒素(笑気)を混ぜた笑気ガスを使用することで治療時に感じる痛みや不安を軽減することができます。笑気ガスは鼻から吸い込むとまるでお酒を飲んだときのようにぼんやりとした意識状態になり、心と身体をリラックスさせることが可能です。なお、笑気ガスは副作用が比較的少ないガスですが麻酔作用があるため、子どもへの使用時には注意を払う必要があります。
静脈内鎮静法や全身麻酔を用いる治療
静脈内鎮静法とは、現在では主に歯科医院で行うインプラント治療などの外科的手術の際に用いられる麻酔法です。麻酔に分類されますが、全身麻酔のように患者さんの意識を完全に失わせることはなく、鎮静作用のある点滴を腕の血管から注入して心と身体をリラックスさせます。静脈内鎮静法では患者さんの意識はあるものの、周りの景色や音がぼんやりとしてきてまるで夢の中にいるような、雲の中を泳いでいるような感覚になります。患者さんによっては「お酒を飲んでほろ酔い気分になったときのような感覚」と表現することもあります。また、患者さんが虫歯治療に対して極度の精神的ストレスを感じてしまうケースや障害がある方で意思疎通が難しい方、認知症の方など、通常の虫歯治療を落ち着いて受けられない状態にある患者さんには保護者の方の同意を得た上で全身麻酔を用いて虫歯治療を行うこともあります。全身麻酔による虫歯治療は大学病院など、限られた医療施設でのみ治療を実施しています。
「3Mix-mp法」や「3Mix法」を用いる治療
3Mix-mp法、3Mix法とは抗菌作用のある3種類の薬剤を虫歯のある個所に塗り、虫歯菌などの細菌を殺菌することにより治療を行う方法です。このうち、3Mix-mp法は歯をほとんど削らずに薬剤を塗ってごく初期の虫歯を治す方法であり、進行してしまった虫歯には適用することができません。それに対して3Mix法は3Mix-mp法と異なり、とりのぞかなければいけない虫歯はできるだけ削り、一部の虫歯を残した状態で薬剤を塗り、フタ(レジンなどの詰め物)をして殺菌を行う、という治療法です。どちらの治療法でも薬剤を虫歯がある箇所に塗って詰め物をする、という点では同じですが、3Mix-mp法が「できるだけ歯を削らずに虫歯を治すこと」を治療の指針としているのに対し、3Mix法は「削れる部分は可能な限り削って虫歯をとりのぞき、神経の境目など判断が難しい部分の虫歯にのみ薬剤を塗り、虫歯菌の殺菌を試みる」という指針があります。